続きの続き:大阪市長と学テ

色々考えてみるに、今回の要望は悪手にならないだろうか?


1つは、「低学力は貧困が原因」と学校サイドから言ってしまうと、生徒や保護者に「そうなんだ。だから勉強ができないのは仕方ないし、勉強しても仕方ない。」という諦めを生んで、悪循環になりはしないだろうか。

また、その主張は先生のこれまでの頑張りを否定する自己矛盾にならないだろうか。


もう1つは、今後市長がドラゴン桜の講師みたいなスーパーチームを低学力校に投入し、それでよい成果が出てしまったら、「ほらみろ。やればできるんだ。今の低学力は教員の責任だ」とならないか。そうなったらもう教員側から反撃はできなくなると思う。市長の経歴を見るに、2手先3手先を考えているんじゃなかろうか。老害議員の思い付きとは違うように思う。


それを踏まえて、ベストの対応はどんなものになるだろう。


まず前提として明確にすべき点。

1つは、「今でも教員は十分努力しているし、能力的にも劣ってはいない」という場合、それをどう具体的に示すか。

もう1つは、本当に貧困が低学力の原因であると"科学的に"説明できるか。(感覚的には、まあそうだろうなー、とは思うが)その場合、貧困が学力向上の何を阻害しているのかを具体的に示せるか。

※ボーナス連動は失敗事例への言及がたくさん出ているので、説明には困るまい。

最初にここで共通認識を作らないと、議論はいつまでたっても空中戦だ。


要望にあった内容では、教員の努力を示す内容は「毎日遅くまで仕事をしている」「荒れている生徒や低学力生徒への対応を頑張っている」というものがある。その努力は勿論貴重だ。だけど、そういった個人個人の思いを積み上げても、市長に対する客観的な説得とはならないだろう。

また、それが学力アップにつながっていないということなら、改善の余地はあるのではなかろうか。

「そんな余裕はない!」と言われそうだけど、よく聞くのが授業とは本来関係ない雑多な業務(給食費の徴収とか、部活とか、過大な保護者対応とか)に時間を取られているというのがある。大阪市も同様なら、まずは「そのような本来しなくていい仕事をさせられているのがまず問題だ」というべきか。それなら責任は教育委員会側になる。(他の自治体も同様だろう、との反論は予想されるが)


また、意見の中には「優秀な先生は他県へ流出する。優秀な学生は就職先に大阪を避ける」とあるが、その文脈における"優秀"とは何を示しているのだろう?

教員自身、「優秀な教員」と「優秀ではない教員」がいることは認めているのなら、少なくとも皆が優秀な教員となるべく改善することはできるのではないか。というか、要望書に自ら優秀ではない教員がいることを書いてしまうのはどうなんだろう?僕が市長ならそこは突っ込みたくなるけど。



また、「貧困と低学力」でググると結構ヒットする。大した知見は集まってないようだが。

・読売オンライン

「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え 日本財団「子どもの貧困対策プロジェクト」 栗田萌希

40兆円の損失を生む「子どもの貧困」の背景 東北福祉大学特任教授 草間吉夫


公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン


・ビジネスジャーナル

低所得の親の子、低学力&非正規社員になる傾向強まる…経済力が教育格差に直結


・リセマム

貧困世帯と非困窮世帯の子ども、差は10歳が境目…低学力の固定化も


・東洋経済オンライン

「親が貧しい子」は勉強でどれだけ不利なのか

橘木 俊詔 : 京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授


箕面市子どもの貧困実態調査のまとめ



上記リンクを読んだときは、短絡的に「なるほど、貧困が低学力の原因だな!」と思ったが、内容を分析しているサイトを読むと、そうとも言えないようだ。特に、こういったデータを読み解く必要がある場合はきちんと訓練受けてないと、特徴的なグラフを見せられると直ぐに影響されちゃう。偏差値の定義がどうなっているか、調査対象の数は十分か、標本誤差はどうかなどなど。


「10歳の壁」の虚妄:箕面市「子ども成長見守りシステム」データから読みとるべきこと

著者は匿名の社会学研究者となっている。日本財団の研究を”トンデモ”と断じているが、理解できる内容だ。こういったのは、元データにあたって、かつ、その内容を理解できるレベルの知性がないとむつかしいな・・・

ここでは、格差は地域特性ではないかとの言及もある。


また、「貧困が学力向上の阻害要因」という場合、具体的に何を指すのか?

ざっと思いつくのは、

・親が食事の用意すらしないから、勉強どころではない

・親が学習に必要な本や参考書を買うといったことしない

・金がないから塾に通わせることもない

といったことか。


また、1年前の記事だけど、ダイレクトに原因が親であると言及したものもある。

貧乏な家の子どもがお金持ちになれない本当の理由と「思考格差」の正体=午堂登紀雄

著者は米国公認会計士で不動産関係の仕事をしているようで、教育関係者ではないようだ。

低所得の親の思考パターンにおいては勉強の価値を理解しておらず、それが子に伝わるから勉強しないのだという、身もふたもない、市長からも学校サイドからもとても言えない内容だ。

これが理由なら、家庭内での低学力の連鎖は永久に切れないことになるから、学校や地域が頑張るしかなくなるけど。

それが全国的な傾向なのか、大阪市で特に顕著なのか、そこはデータがないと何とも言えない。


あと、内閣府の子供の貧困対策のページも後で読み込もう。



論点がとっちらかってうまく整理できないが、理想的なのは市長・教員・保護者が連携していこうという合意ができることだろう。というか、それ以外の着地点はなかろう。

最初にボールをブン投げてきたのは市長だから、まずは教員側から投げ返す必要があるのは間違いない。それは今回のような”要望書”の提出では無い気がする。

現状を科学的に分析した上での、先を見据えた提案であるべきか。そういったものは教職員組合とかでは作れないのかな。


・まずは現在教員が行っている生徒・児童に対する指導手法が妥当なものであると、他県の事例と比較などして科学的に説明。

・教員の努力も限界に近いことを勤務時間などの数値で説明。個々人の頑張りについては言いたいことは沢山あろうが、ここでは余り意味がないと思う。

・上記をしてなお成績が悪い理由は、家庭環境にあると言ってしまうしかないか?だって、教員が能力的にも努力的にも問題がないなら、あとは家庭しかない。ただし、「貧困だから仕方ない」としてしまうとそこで終わってしまう。

 だいたい、現状でも大阪市は子供の貧困対策は行っている。(所管は大阪市こども青少年局企画部経理・企画課)

細かい実施状況はわからないけど、メニューとしては必要十分というか、これ以上は考えられないくらいのものに見える。これを「まだ不十分だ」と攻撃するか?でもそれは不毛だろう。


やはり、「貧困が低学力の原因」というとき、その要素を科学的に1つ1つ抜き出していかないと、漠然とした議論になる。「親が食事の用意すらしないから、勉強どころではない。親が学習に必要な本や参考書を買うといったことしない」というのは感覚的には納得できるけど、じゃあ補助金出して弁当や参考書を宅配すればいいかといえば、それだけでは改善しないだろう。

やっぱり、保護者との関わりがキーになるだろうけど、一人親とか親がいないとかの子供も増えているだろうし、行政として公にここに踏み込むのはかなりの勇気がいりそう。


でも、市長と教員間で攻撃しあってても、何も終わらないだろうしなあ。 

そろそろどこかの教育学者が、科学的で客観的な一定の知見を示したりしないものか。



まだまだウオッチ継続。


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