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続き:大阪市長と学力テストの件

Change.orgで市長へ要望書を出したとの続報あり。約1万5千人。この人数が多いのかどうなのかは何とも言えない。大阪市の人口は270万人らしいから、それを分母にしてしまうと少ない。また、賛同者には市外の人も多く入っているだろうし。


そもそもこのサイトの存在をネットで把握している人自体がどれくらいか、ということもあろうし・・・。ただ、駅前で署名を呼びかけるようなのより、こういったネットの活動のほうが余程意義がある。街頭で署名するのでは、その問題の背景を調べたり、異なった視点の意見と比較してみたり、主張が妥当かどうか自分なりに調べてみるということはできないからね。


「大阪市の現役教員から寄せられた声」というもの公開されている。

一部ポイントをまとめて抜粋。

あと、今更だが、市長は九大法学部→司法試験合格(23歳)→弁護士登録(25歳)→大阪維新から市会議員当選(35歳)→衆員当選(39歳)→大阪市長当選(40歳)とあるから、まあ並の経歴ではないよね。

  • 学力とボーナスを連動させると、がんばっている先生が「学力あげてボーナス上げたいんでしょ」とうがった目で見られる。「全国学テで結果が出る」ようにする接し方と、「今と将来のこの子の幸せ」をトータルに考えての接し方は違う。

  • 子どものためでなく、学テを上げるための策を講じることになる。よい人材が他の自治体に流れる。予算も削られる。環境が整わない状況は教育の機会均等を奪う。

  • 教師は常に授業の工夫や子どもたちが楽しく学びあえる環境作りをし学力向上を目指している。数値にとらわれることで、不登校児童や障害をもっている児童の受け入れ、グレーな児童の対応などがとても乱雑になる可能性がある。

  • 数値目標の達成度合いに執着すると、子どもを人としてではなく道具として見てしまう。生活保護や弟妹の世話などの事情で学校へ来れない児童、個別の支援が必要な児童、何もできない自分に憤りを感じている児童など、たくさんいる。

  • 同僚が他県へ流出する。学校に残るのは数値を上げることのできる教員。テストの過去問をたくさんやらせ、テストの答えを教え、子どもを怒鳴り散らす。

  • 学力テストの前に同じ問題を解かせたり、成績の低い子どもはテストの日は欠席させたりするなど不正が起きるかもしれない。

  • 地域によって生活環境や経済力に違いがあり、元々の学力に差がある時点で不公平。予備校のようになる。学力にしんどさを感じている子ども達を排除する風潮が広がる。学力テストのため当日欠席させる、答えを教えるなどの不正が横行する。

  • 校長に対する圧力が増し、全教職員への校長の圧力が強くなる。どんな手段を使ってでも学力をあげようと躍起になり、個人プレーや学力をあげられない人への風当たりが強くなる。しんどい学級を希望する人が減る。

  • 素晴らしい先生方の離職者が増える。若手は中堅やベテランに教育技術を教えてもらえないようなギスギスした職場環境になる。大変な学校やクラスをもちたくないという感情も。

  • 子どもたちへの生きる力を伸ばせなくなる。学力は貧困の関係と密接に結びついている。学力以前に生活が不安定な子どもたちが学力を伸ばすことは難しい。貧困家庭の救済や貧困率を下げる事が先。

  • 大阪市の子どもも保護者も貧困で、学習以前の問題。

  • 大阪市の子どもたちの心は荒れまくっている。窓から飛び降りようとする子ども、平気で人を殴る子どもも。

  • ボーナスの上がる学校とそうでない学校という暗黙の序列ができ、教職員の異動希望に偏りが生じる。校区選択の偏りも進み、偏見や差別につながりかねない。家庭の所得格差が広がり教育力が全体的に悪化し、貧困児童が増えているのに、行政施策が追いついていない。根本的に学力向上するわけがない現実が目の前にある。

  • 教育は数値目標ではない。どんな立場の子どもにも教育を保障するのが公教育。ひとりひとりの子どもが持つ背景や困難さはさまざまで、その一人ひとりに進路を保障することが大切。言うまでもなく、進路保障とは点数を上げるということだけではなく、子どもたちがさまざまな自分の立場や状況を見据え、自己実現していく力を獲得し、ひとりの人間として健康に文化的に安心して生きていくことを、教育を通して保障していくことです。

  • 学力が高い子どもが入学を歓迎される。テストに向けた対策に時間を割き、子どもが学ぶべき音楽体育図工家庭科総合生活科などが軽視される。休み時間などが学力の低い子への補修にあてられ、子どもが本来遊びを通して育むべき探究心や友だちとコミュニケーションする力が育めなくなる。学力の低い子どもたちが学校を楽しいと思えなくなり居場所がなくなる。

  • 学力が厳しい生徒にとって学校がますますしんどい場所になる。

  • 障害のある生徒が排除される。高得点をとるための授業を行い、本来の学習とは言えないような授業をする。 不正が起こる。

  • 子どもの学力のしんどさは、置かれた環境、育った環境が大きく影響。

  • テストの点数をあげるためだけの授業が行われ、教科の面白さや生活に結び付く学びがなくなっていく。益々面白みのない教員を増やし、点数のとれない子どもは学校に来れなくなる。

  • 子どもが主体的な活動ではなく、教師が全て教えて練習問題をさせるなど思考力と判断力をつけるような子どもが考える時間がなくなる。

  • 教員の評価や給与に関わると子どもが知れば、例えば自分と気が合わない教員が担当だったり荒れた学校だった場合、わざと低い点をとる可能性は大きい。影響力のある子どもが呼びかければ、集団で低い点をとる可能性もある。

  • 教員の「成果」はわかりにくい。教育で得られたものは、生徒はすぐに気づかない場合もあるし、数年後に成果が見られることもあるし、勉強する意味も、事前にわかる子どもなんて誰もいない。教員は評価制度に向いていない。競い合わなくてもみんな一生懸命働いてる。荒れた学校では生徒は私の自尊心を踏みにじり、欠点や粗探しをするが、それでも教師を続けられるのは、教師としての頑張りを認めてくれる人がいたからだ。


上記の共通する主張を集約すると以下のようなものか。

  • 教員は皆頑張っており、低学力の責任は教員にはない。

  • 低学力の原因は、低劣な家庭環境にある。特に大阪市は顕著である。

  • 学テと給与を連動させると、良い教員は流出する

  • 授業がテスト用のものになり、本来あるべき教育の姿を失う。

  • 点数アップのために、低学力生徒や障害を持った生徒の排除が進む

  • 困難クラスへ配置される教員が不公平感を感じる、又は希望しなくなる

  • 教育の成果とは学テで判断できるものではない

自分がもし現場にいたら、同じように思うだろうとは感じる。”これだけ毎日頑張っているのに、よくも好き勝手なことを・・・”と。

でも、この意見だけだと「大阪市は貧困等特殊条件にあるのだから低学力は仕方ない。まずは市長が貧困等を解消するのが最初だ。」となってしまう。うーん。

ただ、少なくとも市長がこの意見を受けて、自分の意見を変えるようには思えない。

教員の頑張りが、客観的なものとして見えてこないというか。

「学テが全てではない」のは勿論だが、かといって「学テは全く関係ない」は違うだろうし。


この要望書自体、「学テとボーナス連動を止めて」というだけのもので、「成績向上のためには○○をすべき」という提案ではないのかな。



1960年代の同様の取組では、

・授業がテスト対策だけになった。

・低成績生徒の強制欠席、回答を教えるなど、不正が発生した。

・イギリスでも失敗した


これに対する解決策は、

・市民の経済・生活の底上げをしていく

・幼少期に本の読み聞かせをする

・家庭で本や新聞を読む習慣

・少人数指導の取り組み

とあるけど、そりゃそうだろうけど、それは誰もがわかっていることなのでは?

市長が代わっただけでその地域がいきなり好景気になるなんて、そりゃ土台無理な話でしょう。次の2つは結局は家庭環境の問題だし。

少人数指導も人員増はかなり厳しいから、この辺でAI学習だとかネットを利用した学習だとかが貢献できるのかも。


まだまだ動くだろうから、引き続きウオッチ。

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